その瞳をわたしに向けて

松田 side



暫く、グズグズと腕の中で泣いていた声が溜め息に変わり、そのうち静かになっていった。


「しんじられねぇ…………」


真っ赤な目尻から、まだ涙さえ目に残ったまま寝息をたててやがる………


どれだけ安心しきってるんだ本当に、赤ん坊かこいつは…………

仕方なく抱き上げて、ベッドに寝かせた。

沈めた顔に掛かった髪の毛を掻き分け、目から落ちかけた涙を手で拭った


無防備なその寝顔に思わずふふっと頬が上がる

無意識に美月の桜色した唇に顔を近づけた


『これはセクハラですよ』
前にお友達宣言したとき、確か清宮に言われたなぁ…………


「………………つい」

スースーと寝息をたてる美月の前で、自分の額を手で覆い項垂れる

…………ここ数日、頭の中は立花の事ばかりだったはず、それがどうしてここに来たのか

会社の人間には手を出さないつもりだったのに…………

ああ、あの時だ。
こいつが酔っぱらって誘ってきた時だ

…………理性を保てなくなるこの唇が悪い

眠り込んでいる美月の唇をぷにぷにと指で
つつく


「これは『好き』じゃないか………」



美月のベッドの前に座り、頬杖がついた






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