その瞳をわたしに向けて
伝えたいこと

連日の残業はまだ続いている。だいたい家に着くのは10時前後になる

「……………美月」

そこに連絡の取れなかった俺の恋人が、玄関の前に踞って座っていた


「……………連絡くらいしろよ。何時だと思ってるんだ」

怒鳴りたい気持ちを抑え、何も言わないで項垂れている彼女の腕を引っ張りあげ玄関の鍵を開け中に招き入れる。

靴を脱ぎながら部屋に明かりをつけると美月はそのまま玄関に留まったまま顔を伏せていた。


「剛平…………ごめん、兄さんが…………」

松田は美月のその様子に溜め息をついた

玄関から、腕を引いてリビングのソファーに美月を座らせた


「メシ食ったか?これ、食べるか?」

帰りに買ってきたカツ丼弁当とビールとミネラルウォーターの入ったコンビニ袋を見せた


ふるふると頭を振る美月にそうか、とそれをローテーブルに置いた。

上着を脱ぎながら美月の横に座り頭を撫でた

「ちゃんと食ってたか?ああっ実家だから大丈夫か…………」


「…………剛平、いつ兄さんに会ったの?何言われたの?剛平が忙しかったのは兄さんのせいなの?」

< 315 / 432 >

この作品をシェア

pagetop