その瞳をわたしに向けて

結局、フロントに松田がかけあってみることにした。


「名前と部屋番号は?」

「田沼 茜です。部屋番号は…………」



「あかねっ!!」


後ろから彼女の名前を呼ぶ恰幅のいい五十代くらいの男性が走り寄ってきた。


「この子がなにか?」

松田と彼女の間に入り込んで背の高い松田の顔を睨みつける。

「違うのお父さん、この人は…………」


「イズミfoods の松田です。田沼社長のお嬢様だと、知らずに失礼しました。」


恰幅のいいその男性の前で軽く頭を下げ、胸ポケットから名刺を取り出した。
        

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「そうだったんですか、いや………この子が部屋にカードキーも携帯も持たずに出ていってしまったから心配で、探してたんですよ。」


恥ずかしそうに頭を掻き「全く世間知らずで抜けてる娘でして」とははっと苦笑する 
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