その瞳をわたしに向けて
やっと見つけた


「ご無沙汰してます。来週から晴れて本社勤務になりますので、こちらにもご挨拶に参りました。」

一度懐かしい2課に寄ってから、常務室へ挨拶に行った。


「でっ……松田、お前結婚はどうした?」


やっぱりここでもか…………

本社勤務の挨拶回りで何度も聞かれ、正直うんざりしていた

「結婚なんてしませんよ。どこまでその噂流れてるんですか?婚約どころか付き合ってもいませんから」


まったく、あれから当の田沼茜はシルバー工房にのめり込んでいたらしく、父親に俺との事を言わずにロサンゼルスに何度も出入りしたあげく、語学留学したらしい。

おかげで、なにも知らない社長はロサンゼルスで俺と仲良くやってると思いこんでて、日本で言いたい放題、結婚結婚と勝手に話を進めていたらしい。


「…………やっぱりデマなのか。でも結構広まってたからなぁ…………」


「常務からも他でもし何か聞かれたら、訂正しておいて下さいよ」

結局、こっちに帰って来てすぐに、田沼茜から話を聞いたのか、社長が早とちりで先走っていた事の謝りの電話がかかってきた。
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