その瞳をわたしに向けて
現実的なハプニング
杉村常務が言ってた『そのうち』はすぐにやって来た


「お久しぶりです、泉のおば様」

常務室の広い皮バリのソファーに、短い髪を綺麗に黒く染めオールバックに整え、品のよいスーツをきた60代の女性……

杉村常務の伯母、泉直孝社長の妻

美月は夫人を知っていた
何年か前に、父親と一緒に兄の代わりで行った、どこかの会社の創立記念パーティーで会っていた。

他の人と違って、大学生の美月に異常に興味を持ってきたのを覚えている

後から聞いたら、結構なお見合いおばさんらしかった……




仕事中、杉村常務の秘書の北川さんが美月に耳打ちする様に近づいてきて常務室に呼ばれた。

「紅茶、お持ちしますか?」

確か、夫人は紅茶派だったはず、たまにお茶会を開いているからぜひに、と誘われた事がある。

勿論、行ったが最後お見合いをそれとなくセッティングされると噂だったが………


「とんでもない……今、そんな事あなたにさせたら私が怒られます。紅茶は、後から私が持って行きます。兎に角、この場はあなたに納めていただきたい」


やっぱり、今日の社長夫人の御訪問はあの話か…………


「あっじゃあ……例えば立花さんも一緒にとかって…………」


「この状況で彼女が入ったらもっと大変ですよ………」


そう言われて常務室に急がされた

…………常務秘書の北川さん、この人も何もかも事情は把握してるんだ

< 47 / 432 >

この作品をシェア

pagetop