その瞳をわたしに向けて
噛み合わない関係



「はぁぁぁぁっ………………」

「おはよう、美月ちゃんって何か疲れてない?」


朝から元気のいい田中さんがデスクでうつ伏している美月に声をかける

「いえっ、大丈夫です。おはようございます。」


全然大丈夫じゃない…………

もう既に疲れた、帰りたい……………



       *****


朝起きたその横に松田さんがいた。

彼のワイシャツから鎖骨と胸板の中に顔を埋め、腕枕した状態であの狭いシングルの私のベッドで目が覚めた。

抱き込まれていた私は……………


何も、何も記憶がない……………

え、え"え"っ?!

はあっ?!

抱かれた…………?


下着は上下とも着けてる。
キャミソールも着てる。
ベッドの下に脱いだブラウス…………
ストッキング履いてないしぃ…………

なにこれ………?いつの間にか脚に大きな絆創膏貼ってある?


「あああああ……………なにぃぃぃ?!」

洗面所の鏡に映る、首から鎖骨に何個かの赤い斑点

なんじゃぁぁこりゃぁぁぁ…………!!



ベッドで眠るあの男を起こすしかない………



「………記憶ないのか?全然?僅かにも?」

信じられないと言った様子で額を押さえ溜め息をつかれた。

「確かに酔ってたが、記憶ってそんな簡単に無くなるもんか?お前が飲んだのってライム酎ハイ三杯くらいだろ」

三杯も飲んだんだぁ。二杯目くらいなら何とか覚えてるかなぁ………て言ったら怒るよね

バツが悪そうな美月に呆れる松田


「お前、酒は大丈夫って言ってたよなぁ」




…………はい、すみません本当はお酒、むちゃくちゃ弱いです。


        *****




気分は最悪だ。じつは頭も重い、完全に二日酔い状態だ。

キスマークは完璧にコンシーラーとファンデーションで隠したはずだったのに………

会社のトイレで田中さんに、首の後ろ側のもうひとつのそれを指摘された


「もっもう最近よく刺されるんですよぉ」

どこにあるか分からないその虫刺されを掻きむしる



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