そして星は流れて消えた
中編



「先生、もう1度笑ってよー!!」


「嫌だ」






7月下旬。

だんだん蒸し暑くなり、夏も本番を迎えようとしていた。



あの日から、先生は1度も笑ってくれなかった。


このやりとりも何回目だろう。



「あんな先生のベストショット、写真におさめるしかないでしょ!」


「笑えって言われて笑えるもんじゃないから」


あのとき写真におさめていれば良かった。



後悔の念が私を襲う。


まだ写真はほとんど撮っていない。


全国高校生写真大会の応募締め切りは、12月24日のクリスマスイブ。



まだ先のようだけど、私の病態がいつ悪化するかわからない。


クリスマス、いや明日でさえどうなっているかわからない。



毎日不安でいっぱいだけど、先生が居てくれるから精神的にも、身体的にも安定していられる。





「どうしたんだ、そんなに見つめて」


無意識に先生を見つめていたらしく、先生に見つめ返されて顔が赤らんだ。




「な、なんでもないよっ!」



先生は二人きりのときは、タメ口で話してくれるようになった。


でも"星華"とは、あれ以来呼んでくれない。



私も"北斗"って呼びたいんだけれど、照れて呼べなかった。



「あのっ!ほっ…」



「なんだ?」

心の中では何度も練習したんだ。


だから本番でだって呼べるはず!




「ほっ…ほく…」




< 34 / 70 >

この作品をシェア

pagetop