そして星は流れて消えた
「先生は天野を"星華"と呼びましたよね。何もないわけがないでしょう」
先生は黙ったまま何も言わない。
「答えられないんですか」
「そういうわけでは…」
さっきの天野の様子を見たら明らかだった。
天野は…この先生のことが好きだと。
「先生は天野をどう思ってるんですか」
この先生が天野を好きだという確信がいまいち持てなかった。
職場に元カノがいるような男は信用できない。
「天野をたぶらかしているなら、やめていただけないですか」
「そんなことはしていません」
「してないことないだろ!」
俺は椅子から立ち上がり、大声をあげた。
近くにいた看護師や医者がこちらを見てきたので、はっとなり座り直す。
「先生は、天野の気持ちをたぶらかしてる。好きじゃないなら天野を期待させるなよ!」
こんなの、好きなのに報われない俺のただの八つ当たりだった。
「俺は、高校に入学して部活に入ってからずっと…天野が好きだったんだ。なのになんで、俺より後に出会ったはずのあんたが、天野の瞳に映ってるんだ。俺の方がずっとずっと、天野を想ってるはずなのにな…」
俺は帰りのエレベーターがある方向へ歩き始める。
「俺はあんたなんかには負けるつもりはない。今日は帰ります。でもまた来ます」
俺は先生の顔を1度も見ずに、背を向けて廊下を歩き始めた。