気になるパラドクス

2

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ホテルのフロントの、広いホールにはキラキラとシャンデリア。その空間に、ドーンとライトアップされて、キラキラときらびやかなクリスマスツリー。

今日はまだクリスマスだけど、イヴではないクリスマスツリーに、どうしてこんなに時期が外れた違和感を感じるのか不思議。
街中の装飾がもう、半分クリスマス半分正月に向かって変わっているからなのかな?

そんなことを考えていると、フロントで話をしていた黒埼さんが戻ってきた。

その横を、何故かホテルマンらしい黒スーツの人がついてきている。

……何か言い争ってる?

なんだろう? と、思っていたら、ホテルマンの彼がにこやかに一礼した。

「当ホテルへようこそ、村居さん」

「あ……はい。初めまして」

「いや。初めましてじゃないんだけどなぁ、村居さん」

親しみ込めて名前を呼ばれて、どこかで会ったことでもあったか考える。

えーと……どこで会ったかな。

「ほら見ろ。全然覚えてない」

黒埼さんが勝ち誇ったように鼻で笑い、ホテルマンの彼は苦笑して頷いた。

「そうらしい。そもそもお前のインパクトがありすぎたんだろ」

なんのことか一向に見えない。
困って黒埼さんを見ると、ホテルマンの彼を指差し苦笑する。

「腐れ縁の幼馴染み。前に飲み会で、お前としばらく話していただろ」

思い出したのは唯一、黒埼さんと飲み会をした合コン。
黒埼さんを無視しようとして、一生懸命違う人と話していた記憶がある。

「ああ! えーと……」

名前を聞いていたような記憶もあるし、聞いていない記憶もある。

あれ、どっちだったかな。

「一之瀬です。俺もけっこう印象強いんだけどなぁ。でもまぁ、黒埼の方がもっと印象的だったよね。抱くとか抱き潰すとか、そんな話をしていたし」

それは忘れて下さい。今日はお泊まりデート確定していて、しかもここはホテルのフロントで……。

生々しさ満載じゃないですか!

顔を真っ赤にしたら、黒埼さんが私を隠すように目の前に立ってくれた。

「覚えてないの確認したんだから、いい加減ルームキー渡せ」

「はいはい。じゃ、楽しんでね? ちゃんとロイヤルスィート確保して置いたから」

やだー! この状況で何を楽しめと言うのー! 恥ずかしすぎて嫌ぁ!

思わず背後から黒埼さんのコートを鷲掴みして顔を埋める。

「一之瀬、お前には繊細さがない」

「人のこと言えるか、馬鹿クロ」

彼らの軽い言い合いを聞きながら、黒埼さんが歩きだしたから、顔を隠したままでエレベーターへ向かう。
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