空蝉
生きてる限り、無限に時は進み続けるわけで。

いつまでも過去を引きずっていても、何もならない。


だから、そろそろ自分の本当の気持ちと向き合ってもいいのではないかと思ったから。



「じゃあ、アイス食ったら俺の部屋に行くだろ?」

「しょうがないから、今日だけは、行ってあげる」

「……『今日だけは』?」

「明日からは無理。夏休み明けに課題テストあるから、その勉強しなきゃだし。今までサボってた分、取り戻さないと、担任に何を言われるか」

「はぁ?!」


あんぐりと口を開ける翔を見て、アユは笑ってしまう。


短大を出て、何になりたいかなんてことは、まだわからない。

けれど、もう、ちゃんと生きようとは思う。



「翔もさぁ、暇なら仕事しなよ。私、無職の人と付き合う気ないし」


げんなりとする翔。



「嫌な女だ」


アユはついに腹を抱えて笑ってしまった。


翔の思い通りに付き合ってなどやるものか。

アユは翔に、べーっと舌を出した。




ゆっくりでいい。

お互いの抱えてきた喜びや悲しみを知りながら、ゆっくりと、ふたりの歩調を合わせていけばいいのだから。



抜けるような青い空。

見晴らしは良好だ。









END

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