十八歳の花嫁
第4章 美馬家の人々

第1話 婚約

第4章 美馬家の人々





第1話 婚約





「そう……聞いてはいましたけど。やはり、そう言うことになったのね」


日曜日、愛実は藤臣と一緒に美馬邸を訪れた。
弥生は思っていたよりあっさりとふたりの結婚を承諾する。
あれほど言ったのに、と怒られることを覚悟していた愛実には、いささか拍子抜けだ。

藤臣の表情も硬く、彼にとっても弥生の態度は予想外だったらしい。


「そんな顔なさらなくても、前言を撤回したりはしませんよ。その約束で、愛実さんを相続人にしたのですから。長倉から、信一郎さんのことを聞きました」


弥生は苦々しげに口にする。

長倉弁護士も、さすがに信一郎の行動に危険を感じたらしい。
弥生が和威にこの邸を譲りたいのは明らかだ。しかし、このままでは信一郎がすべてを台無しにする恐れがある。


「この美馬家をわたくしの代で潰すなど許されません。そのためには……藤臣さん、あなたなら信一郎さんや宏志さんに後れを取ることはないでしょう」


愛実は弥生の言葉に驚いた。

自分と話したときのような『初恋の思い出』云々は影を潜めている。
弥生にとって重要なのは美馬の家だけで、後を継がせたいと望んだ和威すら、どうでもいい様に見えるのだ。


「もちろんです。ただ、簡単には行かないでしょうね。何と言っても旦那様は生前、ご自分と同じ婿養子の信二さんを重用された。今は彼が本社社長です。信一郎さんは社長令息で本社の副社長だ」


藤臣は弥生の言葉に嫌みっぽく答える。

< 129 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop