十八歳の花嫁

第7話 爆弾

第7話 爆弾





「とうとう知ったみたいよ。あのオンナ」

「……は?」


それは藤臣の秘書、奥村由佳の言葉だった。
昨日、ここで最終打ち合わせをしたときに愛実は彼女から言われたのだ。

由佳は受付の位置に貼られた等身大のポスターを指差し、


「コレよコレ。私はそれなりのスキルを持ってるし、今のポジションを失うわけにはいかないから、専務を怒らせる気は全然ないわ」


かなり砕けた口調で言った。
以前、ホテルの一室で顔を合わせたときとはだいぶ違う。

ちなみに、由佳は藤臣の本社専務としての秘書なので彼を『専務』と呼ぶ。瀬崎もそうなのだが、彼は東部デパートにも出入りしているので『社長』と呼んでいるらしい。


「でも……このオンナは違うわよ。マスコミがチヤホヤするから完全に勘違いしてるもの。“自分は特別”って本気で思ってるわ。一番、利用されてるのも知らないで……専務にとって女は単なる道具にすぎないのよ。あ……あなたは別よ、何と言っても大奥様のお声がかりですもの」


唖然とする愛実に、由佳は歯に衣着せぬ物言いだった。

由佳はどうやら、元々さっぱりした性格の女性みたいだ。
向上心があり、男性並の出世欲もある。藤臣と関係したおかげで、秘書室でも優位な立場でいられた。生活も随分潤ったし、愛実との結婚で藤臣が社長……それも総帥となるのであれば、自分は完全な勝ち組だ。
由佳は愛実に対してそこまで言ってのけたのである。

とても学校と自宅、精々バイト先くらいしか世間を知らない愛実には、敵いそうにない女性だった。


「それに、適当に女をあしらっていた専務が、婚約を機に操を立てるなんて信じられないわ。あなたは専務にとって本当に“特別”なんでしょうね。気づいてないのは……コレだけよ」


由佳はそう言うとポスターを手の甲でパンパンと叩いた。

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