十八歳の花嫁

第12話 釈明

第12話 釈明





「申し訳なかった」


ロイヤルスイートに足を踏み入れるなり、藤臣は愛実に頭を下げた。

パーティが終わり、最後まで残った招待客を見送ってすでに二時間が経過している。
愛実のドレスはひとりでは脱げず、美容室の女性に手伝ってもらい私服に着替えた。髪型も複雑な編み込みだったため、美容師にほどいてもらう。リボンと生花を取り外せば、愛実の髪はクルクルと波打っていた。

愛実の着替えが終わったと聞き、やって来た藤臣の第一声がそれだ。


「本当に……何と言えばいいのか……すまない」


愛実が何も言わないので、藤臣はただ謝罪を繰り返す。


(どうして謝るの? やっぱり、わたしとはもう……)


その殊勝な態度が、愛実の心を瀬戸際まで追い詰めていく。


「あの……お聞きしたいんですけど」

「わかってる。なんでも答えよう。だがひとつだけ約束してくれ、私との結婚を取りやめにしない、と」

「そのために、お聞きしたいんですが……」

「いや、ダメだ。まず約束が先だ。来月の結婚式は中止にはしない。それでいいね?」


愛実は一瞬、胸が浮き立つ。

だが、そんなはずがないのだ。
藤臣が愛実のような少女を選ぶわけがない。ということは……。


(そんなに弥生様の遺産と総帥の椅子が大事なの? 奥村さんが言うような、冷酷な人だなんて思いたくないのに)


それくらいなら、まだ正直に話してくれたほうがマシだ。

子供が生まれるから会社を犠牲にしても愛する女性を妻にしたい。
そう言われたときは、愛実は笑って『おめでとうございます』と答えるつもりだった。
好きな人の幸福を願うのに年齢は関係ない。
そう思っていたのに……。
藤臣は愛実との結婚を変更しないという。

愛実は藤臣を見てゆっくりと口を開いた。


「絶対に、嘘はつかないでくださいますか?」

「――わかった。お互いに約束だ」

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