十八歳の花嫁
第6章 愛と偽りのはざまで

第1話 思惑

第6章 愛と偽りのはざまで





第1話 思惑





――「私は……君を愛してる」


藤臣から夢のような告白をされて、ちょうど一週間。
彼は西園寺邸を訪れていた。


「でも……そんな、泊まっていただくなんて」


愛実の母が、ほんの数日間だが家を空けることになった。
付き合いが復活した親戚の結婚式に呼ばれたのだという。母がいなくても特に困ることはない。愛実も弟たちも気軽に了承した。

ところが母は『留守の間が色々心配ですの。結婚までの大事な時期ですもの』そう言って藤臣を呼び出したのだ。

だが、母に別の思惑があることを愛実は知っていた。


『あなた……藤臣さんとまだ、ですって? 一緒に旅行まで行きながら、いったい何をしてるの!?』


正式な婚約披露から、母は嫁ぐ娘にセックスの話題を振りはじめた。
どうすれば夫が他の女に走らないか、男と女にはどんな駆け引きが必要か、等々。
母は自分が妊娠しやすい体質だったことを挙げ、愛実もそうに違いない、という。
結婚が決まっているのだがら、多少前後しても構わない、早く子供を作りなさい、とまで言い始め……。


『結婚まではそんなつもりはないの。藤臣さんもわたしの気持ちを理解してくれたわ』


そう言い訳した愛実に、男性に無用な我慢を強いたらろくなことにならない、と母は異論を唱えた。
そして藤臣を自宅に招いたのである。

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