十八歳の花嫁

第4話 発情

第4話 発情





随分久しぶりに、愛実が美馬邸を訪れた。
藤臣の養父母が彼女を食事会に招いたのだ。

学校帰りの愛実は制服のままだった。
髪を縛る黒いゴム、白いハイソックス、そして学生カバンを手にした婚約者の姿に、藤臣は息を飲む。


(ダメだ……俺はいったいどうなったんだ? どうして白いソックスに欲情するんだ!)


瀬崎運転の社用車から降り立つ愛実の姿を見た瞬間、全身の血が燃え盛った。
禁欲生活の影響か、ここ数日の睡眠不足が祟っているのか。

愛実は毎夜、彼の腕の中で幸せそうに眠っている。
そんな彼女を無下に突き放すこともできず、大人の余裕を見せている藤臣だったが……すでに限界だ。


「藤臣さん! あの、お招きありがとうございます。それに、弟たちのためにわざわざ家政婦の方を回してくださって」

「えっ? あ、ああ……それは瀬崎に命じたんだ。君にはこの屋敷に泊まってもらう予定だからね」


スーツの袖に飛び付いてくる愛実を可愛らしく思いながら、逃げ出したい衝動に駆られる。

だが、それをやってしまえば、愛実は再び藤臣の気持ちを疑い始めるだろう。
ここは彼にとって正念場だった。

そんな藤臣の姿を見て苦笑しているであろう瀬崎に視線を向けるが……。

彼は藤臣の様子に気づくこともなく、真剣なまなざしで愛実を見ていた。
その瞬間、藤臣は制服姿の婚約者を強引に腕の中に囲い込む。


「あ、あの……」


愛実は面食らったように藤臣を見上げる。


「さあ、食事まで私の部屋で休むといい。案内するよ」


藤臣は彼女の肩を抱き寄せるとそのまま歩き始めた。
途中でピタリと足を止め、振り返る。


「瀬崎、ご苦労だったな。この後の予定はなかっただろう? 直帰してくれて構わない」


彼は気づかれたことを悟ったのだろう。


「はい。それでは失礼いたします」


とっさに目を逸らし、深く頭を下げたのだった。

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