十八歳の花嫁

室内の空気が一瞬固まる。藤臣の動きも同様だ。


「なんの冗談だ? 十年前に君は、違うと言って俺を捨てたんだぞ! 忘れたのかっ!?」

「あの人と……石川と結婚したかったの。だから……同じ血液型だから……。ずっと黙っておくつもりだったんです! でも……色々あって」

「自分が……何を言ってるのかわかってるのか? ふたりの男を手玉に取った挙げ句、子供まで利用した最低の母親だと告白してるんだぞ!」


冷静さをかなぐり捨て、藤臣は掴みかからんばかりに恭子に詰め寄る。


「社長――落ちつかれてください」


逆に、妙に冷ややかな瀬崎の声に、藤臣の怒りは矛先を変えた。


「落ちつけ、だと? おまえは話の内容を知っていたようだな。なぜ言わなかった?」

「……」


黙り込む瀬崎の胸倉を掴み、藤臣は怒鳴った。


「おまえたちはグルか? 瀬崎、誰に頼まれたっ!?」


それを見ていた恭子は、弾かれたように立ち上がり頭を下げる。


「す、すみません。私が瀬崎さんに相談したんです! そうしたら瀬崎さんが……」


四年前、恭子は藤臣に邪険に追い返されることを覚悟していた。

ところが、予想に反して出産まではパートタイムの、そして出産後は正社員の職を恭子に与えてくれたのだ。

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