十八歳の花嫁

愛実はサーモンピンクのワンピース姿だった。

迎えが来るまでの数時間、家族でゆっくり過ごすはずが……。
尚樹が花婿交代を知ったせいで、大騒ぎになってしまった。なるべく、式場まで気づかないでいてくれたら、そんなふうに願っていたのに。

真美は何も言わないが、それでも気持ちは尚樹と同じらしい。

ふたりとも藤臣の隠し子騒動は耳にしており、それが原因でトラブルになったことは察しているようだ。
だが、簡単には納得できないのだろう。
それほどまでに、弟妹は藤臣に懐いていた。


「なんだよ、それ。姉さんも思ってるのか? 同じ美馬の男と結婚するんだから、大して違いはないって。和威さんがどんな人か知らないけど……そんな簡単に結婚相手を替えられるものなのか!? どうして美馬さんじゃダメなんだよ! あの人は心から姉さんを愛してるって言ってたのに……」


次の瞬間、愛実はソファを倒すような勢いで立ち上がっていた。


「じゃあ、お父さんが残した借金をどうにかしてくれるの!? 借金ばかり増やして、働こうとしないお母さんも。おばあさまの入院費やあなたたちの学費、生活費――どうしたらよかったのか教えて! こんな結婚なんて……わたしだってしたくない。でも、藤臣さんを待ち続けたら……わたしまで迷惑はかけられないのよっ!」


弟たちにこんなことを言うつもりではなかった。

ずっとひとりの胸に抱え、我慢し続けるつもりでいたのだ。

だが、思いがけず尚樹に責められ、愛実は張り詰めた心の糸が切れてしまう。


「これ以上……姉さんにどうしろって言うの? できるなら逃げ出したいけど、親戚の伯父さんや伯母さんまで巻き込めない……。何もできないくせに、文句ばっかり言わないで!」


溢れる涙で尚樹たちの顔が見えなくなった。

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