十八歳の花嫁

第12話 因果

第12話 因果





藤臣は床に座り込んでいた。

フランス窓に背中をもたれかけ、ジッと中空をみつめている。


愛実を連れて来たときより、内装工事はだいぶ進んでいた。
今日は結婚式で家人の多くが不在になるため、工事の業者に休みを取らせたのだ。だが、明日には再び業者がやって来る。

愛実との思い出に浸るのは、そこが限界だった。


「やあ、暁さん、ごきげんよう。安酒しかありませんが、いかがですか?」


藤臣は国産のウイスキーボトルを抱え、暁に振って見せた。


「こんなところでヤケ酒かい? ザマはないな」


いつもどおり愉快そうな口調だが、実際は藤臣を責めているようだ。


「君の秘書は必死だったよ。あの鬼婆と果敢に遣り合ってた。見かけより、肝の据わった男らしいな」

「瀬崎の身の振り方は考えてあるんだが……どうやら、本社に戻らず走り回っているようですね」


藤臣の近くには数本の空ボトルが転がっている。
それを適当に蹴散らしながら、暁は藤臣に近づいた。


「その顔を見ると、秘書くんが血相変えて走り回っている理由は知っている、ってとこかな」


暁はニヤリと笑った。


瀬崎が自分を嵌めるとは思えない。

だが、藤臣を蹴落としたい人間は嫌というほどいる。

そのため、瀬崎に内緒で別の会社に再鑑定を依頼したのだ。
しかし、現存のデータは信用できない。新たにDNAサンプルを採取する必要があり、それにはさすがに藤臣も手間取った。

その再鑑定結果を受け取ったのが昨夜――。

勝敗はすでに決した後だった。

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