十八歳の花嫁
螺旋階段の向こう、吹き抜けのエントランスホールに白い影が浮かぶ。
彼は目を細めながらゆっくりと近づいた。
ドーム状のガラス屋根から月の光が射し込み、ホールの中央に立つ、たったひとりに降り注ぐ。
だが、白く見えたのは月光のせいだけではなかった。
純白のウェディングドレスを着た女性が佇んでいる。
それは、決してそこにいるはずのない女性。
藤臣は幻でも構わないと思った。
おそらく、自分で思うより酔っているのだろう。
幻覚か……それともまだ、夢の中にいるのか。
ほとんど工事の終わった螺旋階段にもたれかかり、彼はひと言口にする。
「とても綺麗だ……愛実……愛してるよ」
藤臣自身が選び、彼のために着てくれるはずだったドレスに、愛実は身を包んでいた。
その例えようもなく楚々として愛らしい姿に胸が沸き立つ。
何としても手に入れるため、もう少し頑張るべきだったのかもしれない。
和威を蹴落とし、弥生と刺し違えてでも。
だがもう……遅い。
明日の朝、立ち上がるだけで精いっぱいだ。
弥生や他の誰かと戦う力は、今の藤臣にはどこを探しても見つからない。
愛実を守ることは、もう……。
諦め、目を閉じた瞬間、甘く優しい声が耳に響いた。
「わたしも……愛しています、藤臣さん」