双子の御曹司
数日後の金曜日の夕方

「お姉さん!」

「いらっしゃい稔君。今日も…病院だったの…?…」

月曜日に病院だった筈、体調が悪くなったのだろうか?…

「お姉さん大丈夫だよ? 今日は病院じゃないよ!」

私は心配が顔に出ていたようで、反対に稔君が私を心配してくれた。

「そう? 良かった。 今日も伯父さんと一緒なんだね?」

稔君は慌てて顔の前で人差し指を立て「シー」として、私の耳元で囁く。

「たっちゃんは、伯父さんて言うと、機嫌悪くなるからダメだよ?」

「あらっそうなの?」

稔君と私は顔を見合わせて微笑する。

その会話は聞こえていたらしく、彼はバツが悪そうに右斜め上へ視線をそらしている。

その顔が余りにも可愛らしく、私は思わず声を掛けていた。

「いらっしゃいませ。たっちゃん!」

彼は目を丸くし、驚いている。

そりゃそうだ、驚くよね?

言った自分が驚いているのだから!

お客様に、こんなふざけた事を言うなんて、あり得ない。
勿論、今までお客様に、こんなふざけた事を言った事など一度もない。

なぜだろう…?
こんな気持ち初めて…

彼のそんな顔を見て稔君が彼に声を掛ける。

「たっちゃん顔が赤いよ?」

本当だ顔が赤くなってる。うふふ可愛い。

「みっ稔… 友達の誕生プレゼントを買いに来たんだろう? 早く選びなさい!」

彼はちょっと怒った口調で稔君を急かし稔君は「はーい」と返事をしておもちゃを選び出した。

私は赤面してる彼に慌ててお詫びを言う事にした。

「すいません…ふざけすぎました。」と彼へ頭をさげた。

「あっいえ…あの…」

彼が何かを話そうとしたその時、後から「すいません」と、他のお客様から声が掛かった。

私は振り返り「はい、少々お待ちください。」と声をかけ再び彼を見る。

彼は「どうぞ、あちらのお客様へ。」と微笑んで言ってくれた。

「そうですか? では、失礼します。」と笑顔で会釈をし、先程のお客様の元へ行く。





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