Addictive Gummi
部長に突然キスをされる
ある日突然、部長にキスをされた。
そして私の日常は一変した。
商品開発部のトップ、元宮勇日(もとみやゆうひ)部長は社長の次男だ。
「スウィンプト・コーポレーション」は有名なお菓子メーカーだ。
創業時には小さな駄菓子工房だったのが、今の社長の代で大ヒット商品を出して、一躍大成長を遂げた。
今や本社ビルと全国に支店と工場を持ち、社員数千人の企業となっているが、同族経営の体質は創業時と変わらない。
社長のご子息という時点で、一般社員の私たちとは次元が違う元宮部長とは、部署も違うし、言葉を交わしたことさえなかった。
そう、部長とは一言も交わさないうちに、キスをしたのだ。
それは一週間前のこと。
総務部の私は、郵便物の仕分けをして、各部署の担当者へ配達している。
午前中に届けなくてはならないのに、その日は朝一で急な仕事が入り、遅くなってしまった。
お昼休みに入り、急いで各フロアを回った。
エレベーターを使うと、秘書部の人たちがランチへ行く流れとぶつかってしまう。なるべく避けたいという意識が働き、運動がてらに階段を使うことにした。
秘書部は「顔で選ばれている」と噂されるほど美女揃いだ。
制服を着ている事務員とは違って、彼女たちは華やかなスーツやワンピースを着ていて、パーティーに行くような巻き髪やメイク、綺麗なネイルをしている。圧倒的な女子力の集団だ。
うっかり遭遇してしまった日には、自分の人生を悔やみそうになるから、できるだけ見ないようにしている。