オフィスのくすり
 ピー、といきなり静かなオフィスにFAXの音が響き渡った。

「はいはいはーい」
とFAXに返事をしながら、そのままパソコンのキーを打つ。

 結構長く鳴っている。

 そのわりに紙の落ちる音がしない。

 随分時間がかかるな。

 図面か何かか? と思いながら、見に行った。

 そのとき、ようやく、ぱさりと落ちてきたが、やはり、紙は一枚きりだった。

「あれっ?」

 軽く丸まった白い用紙に映し出されていたのは、すごい形相をした女の顔だった。
「なにこれ?」

 触るのも怖いような、と思っていると、ひょいと後ろからそれを取り上げたものが居た。

「なんだ、これ?
 悪戯か?」

 いつの間にか真後ろに立っていた大きな男を振り返る。

「井上くん―ー

  の霊!?」
と思わず叫ぶと、

「なんで、霊だ」
と相変わらず愛想のない顔で、FAXを見たまま、井上は言う。
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