彼が嘘をついた

俺が嘘をついた理由(ﾜｹ)

～隼人Side～

11月の第1土曜日の朝。
俺は7時過ぎに目を覚ますと、勢いよくベッドから飛び起きた。

今日は俺にとって大切な、見合いの日だ。
見合い相手は、俺の"恋人"である佐久間遥。
なぜ恋人である遥と見合いをするのか…その理由はあとから説明するとして…。

やっぱり遥は怒るだろうか？俺が嘘をついたことを…

それでも、遥とちゃんと向き合って"恋愛"をするためには、俺の身分を隠すしかなかった。
彼女が、『四つ葉フーズの社長令嬢』と言う事実を隠していたように、俺だって『五十嵐デパートの御曹司』と言う身分を隠さなくちゃ、彼女に近づくことが出来なかったのだから。

パンとコーヒーの簡単な朝食を済ませると、来客を知らせるベルがなる。
玄関を開けると、遥の従兄弟の二宮大樹がいた。
ドアを開けると、そっと入ってくる。

「よぅ！
見合いの支度は進んでいるか？」
そんな軽口を叩く大樹。

俺の身分を知っている大樹は、今日の見合いで、大切な存在である。
悔しいけど、遥が信頼している人物。
俺の身分を知った遥が、まともに俺の話を聞いてくれるか？
答えは"ノー"である。
ちゃんと俺の話を聞いてもらうためには、大樹の存在が必要なんだ。

「…なんとかな。
男の俺は、スーツさえ着ればなんとでもなるから」
着て行く予定のスーツを指さして答える。