彼が嘘をついた
だけど、相手は隼人くん。私の気持ちなんて、すぐに読み取ってくれる。

とりあえずは身支度を整えて、リビングへ向かった。
リビングに行くと、ココアの甘い香りがした。

「良かったら飲んで」

「ありがとう」

1口飲むと、ココアの甘さと温かさが体に染みる。
「おいしい」
思わず口に出すと、
「良かった」と微笑んでくれた。

「なぁ遥」
彼が私を呼んだ。
真剣な声に、私は姿勢を直して「はい」と答えた。

「今さらだけど。
順番が違ってしまったけど。
俺の父親は、五十嵐デパートの代表をしている。近い将来、俺は五十嵐に戻り、経営に携わることになると思う。
こんな俺で良ければ、結婚を前提に付き合って欲しい!」

「……………」

「………ダメ、か?」

たぶん、嬉しくて言葉が出ない。
それでも、自分の気持ちをしっかり伝えなくちゃ!

「…1つだけ条件があるけど、いい?」

「何?
俺に出来ること?」

「…うん。すごく簡単。
もう、嘘はつかないで。お願い!」

「分かって。
ごめんな、遥。
もう嘘はつかないよ。
だから、これからずっと俺のそばにいてくれ」

私は、しっかりと頷いた。
ヤダな…。
嬉しくて、涙が出ちゃうよ。

「ずっと大切にするから、泣かないでくれ」
彼がそう言って涙を拭いてくれた。

彼の嘘から始まった私からの恋。
それが今、本物になろうとしている。





   END


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