オトナチック
「何かあったのか?」

そう聞いてきた杉下くんに、
「何もないよ…。

ただ、いつまでも杉下くんの家にいるのは迷惑だと思ったから」

呟くように、私は答えた。

「迷惑な訳ないだろ。

何より、婚約者を演じる約束だって…」

「それはちゃんとやるから」

さえぎるように言った私に、
「意味がわかんねーよ…。

婚約者は演じるけど家は出て行くって、全然意味がわかんねーんだけど…」

杉下くんは訳がわからないと言う顔を浮かべた後、息を吐いた。

わからなくてもいいよ。

私のせいで、これ以上杉下くんが傷ついて欲しくないの。

「これで話は終わりだから、ご飯食べるね…」

杉下くんにそう言った後、私は給湯室へと足を向かわせた。
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