蜜味ヴァンパイア~薔薇の花園~
#4
慌てて走っているボクの前に、突然、『ソイツ』は現れた。

金色に輝く髪が、ひと際、目を引くが、サングラスをかけているのが、怪しい人物を物語っていた。

ボクは、訝しげに『ソイツ』を見つめて、

「ボクに何の用だよ!?悪いけど、急いでるんだから、そこ、どいてくれる?」

そう言った。

すると、『ソイツ』は、深く冷笑を浮かべて、不敵にこう言ったんだ。

「嫌だと言ったら?」

ボクは、カチンッと頭にきた。

なので、得意の必殺の蹴りを入れたつもりだった。

だが、『ソイツ』は何事もなかったかのように、平然と涼しい顔で立っていた。

えっ!?

ボク、蹴り入れたつもりなのに‥‥‥‥。

そして、『ソイツ』はさらに深く冷笑を浮かべると、

「フフッ。意気のいい小娘だ。」

そう言ったんだ。

ボクは、それを聞いて、さらにカチンッと頭にきた。

どうやら、『ソイツ』は、ボクを『女』だと勘違いしているらしい。

確かに、ボクは、傍目から見たら、『超美少女』だが、れっきとした『男』だ。

ボクが口を開きかけた時だった。

急に『ソイツ』が、ボクの目の前に立っていたのだ。

えっ!?

なっ、何、コイツ!?

一体、いつの間に‥‥‥‥!?

そうボクが思っている間に、『ソイツ』はいきなり、ボクを抱きしめてきた。

「ちょっ、ちょっと、何するんだ!?はっ、離せよ!!」

ボクはもがくが、力強い腕から逃れられない。

そして、『ソイツ』は、さらに驚くべきことをした。

ボクに口づけてきたのだ。

「っ!!ふっ‥‥んっ!!」

濃厚な口づけと、『ソイツ』から漂う薔薇の匂いに、ボクはクラクラとなり、意識が朦朧となってきた。

それからのことは、ボクは覚えていない。

ただ、唯一、記憶していることは、

「ククッ。まさか、こやつが『男』だったとはな。しかも‥‥‥‥。」

『ソイツ』が、深い冷笑を浮かべ、そう呟いたことだけだった。

それが、ボクと『ソイツ』との『出逢い』だった。









< 6 / 14 >

この作品をシェア

pagetop