キミのことがスキなのに…。
大切

「生存率は、一年30%くらいかな。」

主治医の先生がそんなことをいきなり言っていた。
いや、その前からなんか言ってたのかもしれない。
でも、突然のことに頭がついていけなくて、
その言葉しか頭に入ってこなかった。

「先生、ウソですよね?」

病院の先生がウソなんか言うわけないと分かっていても、
そう言わずにはいられなかった。
頭が真っ白になりすぎて、涙なんか流れなくて、
“悲しい”なんていう感情ですら出てこなかった。

「病名は難しいから、言わないでおくよ。
でも、自分が病気なんだってことは自覚しておいてね。」

早々と話を進めていく先生。

「今は初期症状の指の痙攣とかしか出てないけど、
これから記憶障害っていうのが出始めると思うから
頭にだけ一応、入れておいてね。」

病気の説明なんかされても理解はできなくて、

「記憶障害ってどんなことが起きるんですか?」

今の記憶が無くなっちゃうなんて言わないで。
お願いだから。
そんな思いは見事に打ち砕かれた。

「今、覚えられていることを徐々に忘れていっちゃったり、
症状が進めば、直前までにやっていたことまで忘れてしまう。
って感じかな。」

そんなの困るよ。
なんで私なんだろう。
神様は不公平だ。なんてことも思った。

「でも、年々の進行状態を見ていると、
予想生存率を上回ることが多いから、あくまでも予想だと思ってて、ね?」

そんなこと言われても分からないよ。
予想でもみんなより早く死んじゃうんでしょ?
信じられるわけないじゃん。

「今日、伝えることはこれくらいかな。
また後日、なんかあったら病院のほうに連絡してね。」

「はい。」

最後はなんとなく返事しただけだった。

「ありがとうございました。」


とりあえず、学校に行こう。
遅刻してでも今は行きたいから。
そんなことを思いながら、学校までの道を歩く。




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