カ・ン・シ・カメラ
付き合い始める
颯が希彩ちゃんに付きっきりになり、最初の休日がやってきた。


あたしは動きやすい格好をして家を出る。


近くのバス停でバスに乗り、病院の近くで下りた。


希彩ちゃんが事故に会った当日も、あたしは1人でここに来た。


少し深呼吸をして、院内へと足を踏み入れる。


エレベーターホールへと向かうと、泣きながら歩いている家族とすれ違った。


誰かが亡くなったのかもしれない。


そう思い、エレベーターに乗り希彩ちゃんが入院している階まで登る。


今日は颯には何も連絡を入れてこなかった。


連絡を入れなくても、どうせここにいるということはわかっている。


あたしは真っ直ぐ706号室に向かった。


手にはちゃんとお見舞い用のフルーツを持っている。


二度ノックをすると、中から「はい……」と、元気のない声が帰ってきてドアが開いた。


「お見舞いにきたよ」


あたしはできるだけ明るい顔をして、颯にそう言う。


颯は少し口角を上げて微笑むと、あたしを病室へと招き入れてくれた。


ベッドの上には色んな管を通された希彩ちゃんが、目を閉じて眠っている。


家族の人は、今はいないみたいだ。
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