名前で呼べよ。~幼なじみに恋をして~
本当は息苦しい。


だけどずっと、そうちゃんを好きにならなければよかったなんて思えるほど、そんなに簡単な恋じゃなかった。


苦しさに目を閉じることも、苦しさに身を任せることも、どちらも違うと思う。


ちゃんと好きでいたい。


わたしはそうちゃんの幼なじみだ。


彼女だって思っている人もいるけど、本当は違う。


もし本当に彼女なら、拗ねたり妬いたり、周囲を牽制したり、向けられる生温かい視線に同意したりしてもいいのかもしれない。


でも、ただの幼なじみのわたしが、そうちゃんの一緒に帰る人であるだけのわたしが、そうちゃんに告白する人を非難することはできないし、恨むのはみじめだし、憎く思って嫉妬する資格も持ち合わせていない。


……だから今は、そうちゃんの中に存在があればいい。


わたしが、幼なじみとして、佐藤美里として、できればみいちゃんとして、そうちゃんの中に少しでもいればいい。


それだけなんだけど、これが簡単そうでなかなか難しい。


本音を言うならば、あの泣いていた女の子はすごいと思う。


告白をする人は、すごいと思う。


タイミングを狙っているわたしなんかよりずっとずっと勇気があって、正直だ。素敵な人だ。


無心にココアを飲む。


大好きなはずなのに、すぎる甘さが喉に絡みついた。


……ああ、本当に。


この学校は、恋する人々に優しくない。
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