Special coffee, with you.【番外編追加】
前も見れず、周りも見れずうつむいていると、すぐ横から安藤さんの声が聞こえた。

「お待たせしました」

そう言っていつもの青磁のコーヒーカップを置いてくれた。

そっと見上げると笑顔を見せて、「ゆっくりしていってください」と甘い声で言った。

いつもと違う・・でもいつだって優しい。

「はい、ありがとうございます」

気持ちに応えるように、私も笑顔で言葉を返した。

そしてゆっくりコーヒーを飲み、少し経ってからエビグラタンを食べて、お言葉に甘えて閉店近くまでゆっくりした。

お客さんも少なくなり私もそろそろ帰ろうと思った時、安藤さんが側に来て「もう少し居られますか?一緒に帰りましょう」とささやいた。

「はい」

そう答えるのが精一杯だった。

そして他のお客さんも帰り、後片付けをしている樹里ちゃんに声をかけた。

「そう言えばこの前のコーヒー代払っていなかったよね、ごめんね」

バッグから財布を出していると、「あ!大丈夫です。オーナーの奢りなんで」と言われてしまった。

「え?安藤さん?」

「はい。あの後しっかりとご飯とデザートも食べて、そのレシート渡しました」

「そんな、私が払うよ。あの、安藤さんレシートください」

私が手を差し出すと、安藤さんは「いいんですよ、ほんのお礼ですから」と言って笑顔を見せる。

「そうですよー。感謝感謝だそうです。茉優さんに会えたお礼と付き合えたお礼で、今日も好きなものどうぞってメニューを差し出してくれました」

「そんなー」

「それくらいオーナーは茉優さんと付き合えて嬉しいってことです。ね!オーナー?」

「はい」

否定する事なく頷いて見せるなんて・・本当に安藤さんは隠さないっていうか、素直というか。

でもそれが本当は嬉しかったりする。

密かに喜んでいると、樹里ちゃんがこの前の事を聞いてきた。

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