Special coffee, with you.【番外編追加】
すると隣の男性はスーツの胸のポケットから名刺ケースを出して、一枚の名刺を取り出し私の前に差し出した。

「後藤といいます、よろしく」

「あっ、ありがとうございます。私・・名刺を持ち合わせてなくてすいません」

「大丈夫ですよ、お名前だけ教えて頂けますか?」

「はい、佐野と申します。よろしくお願いします」

自己紹介してお辞儀をすると、「よろしくね」と爽やかな笑顔を見せた。

なかなかのイケメンさんだなっと感心したところへ、「茉優さん」と後ろから声が聞こえた。

「え?」

振り返ると航太くんがそばに立っていた。

「何か作りましょうか?」

クールな航太くんが少し笑顔を見せて聞いてきた。

コーヒーを飲み終わる頃合を見て聞きに来てくれたのだろう。

「ん、ありがとう。じゃあ~、オムライスにしようかな?」

「はい」

私のオーダーに航太くんが返事したところで隣の後藤さんが「僕も同じものをお願いします」と言った。

「はい、少々お待ちください」

そう言って航太くんはカウンターの中に入っていった。

それを目で追ってから残っていたコーヒーを飲んでカップをソーサーに戻し雑談をする中で、ふと後藤さんが「茉優さんって名前だけは知っていたんですよ」と言った。

「えっ?どうしてですか?」

驚いて後藤さんを見ると、クスッと笑って教えてくれた。

「今もそうだけど、ここのオーナーもアルバイトの人も茉優さんって呼んでますよね。いつも楽しそうに会話されているのをよく見てました」

「あ・・声が大きかったでしょうか?」

騒いでいるつもりはなかったけど、他のお客さんには騒がしく思われたかなと思うと申し訳なくなる。

心配顔を浮かべると、後藤さんは「いえいえ」と首を振ってみせた。
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