オフィス・ラブ #Friends
そんな自分に、ぞっとして。

あさましくて、いやらしい自分に、おぞましいくらい嫌気がさして。


身体の底から、何かがこみあげてきて、吐くかと思ったら、実は涙だったらしくて。

そんなわけで、泣いてるの。


だから、こんなふうに、慰めてもらう資格なんて、ないんだよ。


鞄を地面に置く気配がして、両腕で、ぎゅっと抱きしめられた。

あたしはどっちかっていうと、いたたまれなくて。

そんなんじゃないから、早く離してほしかったんだけど、腕が重くて、持ちあがらなくて、突っぱねることもできずに。

胸に頭を押しつけられるようにきつく抱かれて、シャツとネクタイを汚しちゃうな、と考えた。


弱ったようなため息が聞こえて、ふと、びしょ濡れの頬に手が添えられたと思ったら、表情を確かめる間もなく、抱きすくめられたまま、びっくりするほど柔らかいキスが来た。


それがどういうことか、理解したのは一瞬後だった。


何やってんの、堤さん。

こんな、会社の人が通りまくる場所で。


そもそも。

あたしまだ、言ってないよ。



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