オフィス・ラブ #Friends

頭が痛い。

目の奥がガンガンと鳴って、氷嚢か何かがほしくなってきた。


そう思っていたら、額に冷やりと濡れたものが押しつけられた。

見あげると、煙草をくわえた堤さんがペットボトルを差し出している。



「ありがとうございます」



片手をポケットに入れていた堤さんは軽くうなずくと、あたしの隣に腰かけて、脚を組んだ。

ふう、と熱い息が出た。

こんなに泣いたの、何年ぶりだろう。


ペットボトルを目にあてる。

結露したしずくがぽたぽたと顔を伝って、それすら気持ちいい。



絶対に泣きやまないことを察知したのか、堤さんはあたしの腕を引いて、この路地につれてきた。

植えこみを囲う、腰ほどの高さのコンクリートの縁石に座って、あたしはだらだらと涙を流し続け。


ひとりで泣きたい気持ちを読んでくれたみたいで、堤さんは少し離れたところで煙草をふかして。

あたしを好きなだけ泣かせてくれた。



ハンカチが、どの面もぐっしょりで、使い物にならない。

何キロか痩せたんじゃないかってくらい、涙を放出した。


堤さんがくれたのはスポーツドリンクで。

まさに今あたしが求めていたものだった。


鼻をすすりながら、それを開けて飲む。

思ったより喉が渇いていたことに気がついて、一気に半分ほどを飲み干した。

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