となりの専務さん
「‼︎⁉︎」

びっくりと、ドキドキと、いやもうわけがわからなくて、顔は熱くて鼓動が激しい。


「ちゅ、中学生みたいな恋愛するって言ったじゃないですか!」

「それは処女の君を落とすために言ったこと。もう落ちてるなら話はべつ」

「だ、騙したんですか!」

「騙してないよ。君を落とすまでは本当にそういう戦法でいこうと思ってたもん」

もん、じゃないですよ! かわいいな‼︎



そして……



「…….君と結婚したいって話も、ウソじゃないよ。あの時はすでに君に運命感じてたし、この子と結婚したら楽しいだろうなうって思ったから」

「……っ」

「まあ、でもすぐに結婚ってわけじゃなくてね。おいおいね」

「はい。うちの借金もありますし……って! 私すっかり浮かれてしまっていましたが、本当にこんな私でいいんですか⁉︎ 家に借金あるなんて……それこそ専務のお父さんが許さないんじゃ……」

「さあ? うちは大丈夫じゃない? わかんないけど。今はそんなこと気にせずに、普通に楽しもうよ」

「……はい」

「仕事もまだまだこれからたくさんがんばってもらわないといけないしね」

「……はい!」

「じゃ、もう一回」

「え?」

キスにも慣れてもらわないとね。そう言って専務は私の顎をクイ、と持ち上げ、もう一度私にキスをした。



……その後。私たちは手をつないでいっしょにアパートまで帰った。


アパートに到着すると、「今日は俺の部屋で寝なよ」なんて言われたけど、さすがに心臓が壊れると思ったのでお断りした。
……まあ、部屋がつながってるのでとっくに同じ部屋で寝ているようなものだけど……。



壁はもうすぐ修理される。

でも、私たちは他人になることはない。


それどころか……恋人、になったなんて……まだ夢を見ているみたい……。




こうして、私と専務はお付き合いを始め、幸せだらけの道のりをいっしょに歩んでいくーー……





なんて。


世の中そう甘くはないのでした。

この時の私はまだ、ただただ浮かれてるだけで、深くは考えていなかったけどーー……。
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