幸せは、きっとすぐ傍




***


カーテンの隙間から窓の外を覗き、目でもそれを確認してから穂夏はそっと溜め息を吐いた。


今日は十二月二十四日、日曜日。世間でいうところのクリスマスイブ、しかし外は生憎の雨である。雪ではなく雨だ。


けれど自分には関係ない、と布団を引き上げて頭からすっぽり被った。外からは相変わらず雨の落ちるメロディーが鳴り響いている。


その音を息を詰めて聞きながら、穂夏はそっと瞳を閉じる。


一年前の今日、当時付き合っていた彼氏にフラれた傷は癒えていない。


何か他に大きな出来事があったら忘れられたかもしれないが二十四歳にもなって早々なく、しかも何故か今年に限って周りに結婚した友達もいない。穂夏自身新たな出会いもなかったから彼氏もいないままだし、忘れたくても忘れられないまま。


あの日を思い出すと今でも胸に痛みが走る。どうしてわざわざクリスマスイブにフッたんだろうと疑問に思う。


気付けなかった穂夏も悪かったかもしれない。否、やっぱり悪いのは彼の方だ。


だって、会社の飲み会で泥酔するという醜態をさらした上、職場の女の子をホテルに連れ込んで────あとは言わずもがな、である。


ただホテルに行っただけなら大きな喧嘩で済んだのになあ、と今になっても思う穂夏はまだ彼を引きずっているのだ。冗談抜きで女の子を孕ませてしまった以上、簡単に堕ろしてとも言えなかったのだろう。


彼は優しいし子供も大好きだから、そんなこと言える訳ないくらい穂夏も分かっている。そして責任を取って女の子と結婚したことも。


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