君とキスをした。

一番聞かれたくないこと





学校から歩いて5分、一番近い駅が見えてきた。

私たちはこの電車には乗らない。

綾瀬君によると、私の住む家から徒歩二分のコンビニの近くに住んでいるらしい。

じゃあ、方向は一緒だよね。


「それで渡辺がさ、保健室行ったんだよ」

「そうだったんだ〜!」

くだらない会話をしていて、歩きながらふと空を見たらさっきの夕日がもう無くなりそうになっている。


ちらりと綾瀬君の方を見ると、綾瀬君も空を見ている。
私より二十センチぐらい上にある綾瀬君の横顔は、夕日の光と影が映っていて、凛々しい。


綾瀬君が私に気づいてこっちに顔を向けたから、私は慌てて夕日の方を見た。



一瞬見えた綾瀬君の顔が、少し切ない笑顔だった。



私は気づかないふりをして、夕日を見ていた。


数秒の沈黙を破ったのは、綾瀬君。

「なぁ川崎」

なんだろうと思い、私は綾瀬君を見る。


「なに?」

すると綾瀬君はどこか真面目な顔をして言った。

「川崎、島田と別れたのか」

それは言って欲しくなかった言葉。だけど、気を使ってここまでしてくれた綾瀬君に悪い気がして、聞かれたことはちゃんと答えようと思った。

「うん」

「…三年も、付き合ってたのにな。」

「うん…」

そう、三年も付き合った彼氏だった。
中学三年生の時に、告白されて、初めて付き合った彼氏だった。

それと同時に、私が初めて好きになった人だった。

「俺は、中学校も島田と川崎と一緒だったから、知ってたんだよ」

綾瀬君は少し下を向いて言った。
私も少し下を向いたら、コンクリートと歩く自分の足が見える。

「綾瀬君、島田君と卒業するまで仲良かったよね」

「そうだったな」

綾瀬君は下を向いたまま話す。

「なぁ、川崎はどうして島田と俺が仲悪くなったかしってるか?」





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