君とキスをした。

お世辞はほどほどに




私は少しだけ声を大きくして、


「綾瀬君の制服汚れちゃうから」


と言った。

でも、綾瀬君は一瞬私の顔を見て何も無いような顔をしてから

「別にいいよ」

と言って、また私の肩に顔をうずめる。
私のその言葉につまらなそうに応える綾瀬君が面白くて、涙が引っ込んだ。


仕方なく、しばらくそのままにしていた。



綾瀬君が温かくて、冷たかった私の体はいつの間にか熱を持っていた。同時にさっきまでの不安がなくなって、なぜかほっとしていた。

ズッと鼻を吸うと、息がしやすくなった。
つまりが無くなって綾瀬君の髪から優しいシャンプーの匂いがする。



「綾瀬君の髪ってサラサラだね」

鼻声で私が話すと、綾瀬君はふ、と笑ってから、

「川崎はふわふわしてて、可愛い」

「可愛くないよ」

可愛いなんて私は言われ慣れてないから、ドキッとして顔が熱くなった。

「川崎は可愛いよ…って、赤面してるし!」

私の顔を見て口を抑えて笑う綾瀬君。

かっこよくて、一瞬ときめいてしまった。
けど、すぐ我に戻る。


「しっ、してないしてない!」


私は手のひらをないないと振って否定する。


「してるしてるー、可愛いね」


また可愛いねなんて言われたから、顔がさらに熱くなった。




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