生神さまっ!

十、血ノ色ヲシタ女王ハ

「…秋奈、大丈夫?」



ぽん、と肩に置かれた手に、びくっと体が動く。



「…大丈夫」



血は、大丈夫なの。
けど…


人が死んでいく姿を見たら、
嫌なことを思い出す。



頭に映る映像を振り払うように、首をぶんぶんと横に振る。




「…確かに今のは見てて気持ちいいもんじゃないよなー」



「…違う…


……大丈夫だから、2人とも。
早く、行こ」





違う、という言葉は小さすぎて。
2人には聞こえなかっただろう。



でも、その方が私にとっては良かった。



屋敷にはいる時、必然的に床に転がる彼の体を見なきゃいけない。




ちら、と見ると…


…やっぱり、なぜか…優しい顔をしている。




生気のないような、戦っている時の目からは想像がつかないほど、
とても優しい顔だった。




奥の方へ行くに連れ、2人が速度を遅くするのが分かった。

きっと警戒してるんだと思う。



私も2人に連れて、段々ゆっくりとした歩みにする。



「…確か、佐保邸の見取り図を見るからに…こっちだったよな?」



「うん…

あ、見えてきた」




2人が目指している場所は、分かっている。

作戦会議をした時、教えてくれた。



佐保邸には、それはそれは大きな広間があるらしい。


屋敷の中心に位置するそこ以外に位置する部屋では、戦いなんてできない。



そっと、大広間らしき部屋に…夏樹が一歩入っていった。



きっと、卑弥呼は…




「…おや、やっと来ましたか」




そこに。
< 155 / 686 >

この作品をシェア

pagetop