腹黒司書の甘い誘惑
仕事で生徒に直接関わるのはその時くらいなのだが、利用する人は殆んどいない。
なので大体デスクの上で仕事。

服装は特に決まりはない。職場だからジャケット、ブラウス。下はスカートやスラックスで組み合わせて、鎖骨まで伸びている栗色の髪は横に束ねている。

まったく苦じゃない。
職場の雰囲気もとてもいいし。

「おはようございます!」

元気よく事務室に入っていくと、デスクに着いている二人の女性が振り向く。

一人はこの事務室のリーダー的存在、豊子《とよこ》さん38歳、既婚者。ふくよかな黒髪のショートカットの女性。

もう一人はお色気たっぷり美鈴《みすず》さん32歳、既婚者。茶色のセミロングヘアの女性。

二人はわたしに向かって「おはよう」と微笑んだ。

二人ともわたしより年上だけど、そういうことは関係なしに明るく楽しく接してくれるし、事務室には三人しかいないからいつも気楽に仕事ができる。

この職場で働くことができて本当によかった。

「理乃ちゃん、今日も元気いっぱいね。これ、昨日の夜に作って残ったから持ってきたの。二人ともよかったらつまんで」

豊子さんは笑顔で三つのデスクの真ん中ににタッパーを置いた。
美鈴さんとわたしが向き合っていて、その横に豊子さんのデスクがあるのだ。

そして豊子さんの斜め後ろに窓口があって、そこでサインの必要な郵便や荷物の受け取り、筆記用具の販売、生徒への書類の配布と受付をする。
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