あるワケないじゃん、そんな恋。
「芹那ちゃん……」


私の声なんて当然無視だよ。

道開く…って言いながら閉じたんだから、ショックも倍増するよね。



(でも、強いなぁ……この子。…ホント負けるよ……)


自分が失恋したワケじゃないけどさ。
恋に失敗すると芹那ちゃんみたいになるんだ……って気づかされた。


教授本では味わえない実感。

どんなに知りたくても知り得なかったことを、この子は身を持って教えてくれたんだ……。





「菅野……」


名前を呼ばれて振り返った。

目の前にいるのは寒がりで、チーズ鱈が好きでお酒を飲むのが大好きな男。

同い年の正社員で、口が悪いサイテーな上役。



でも……ずっと知ってたよ。

根は優しくて、いざという時は女扱いしてくれる…って。

恋愛してみないか?…って聞いてくれたよね。

「好きだ」…って言葉も言ってくれた。


嬉しかったよ。


……だから、許してやってもいい。


ファーストキス奪われたのも、毛糸のパンツ笑われたことも。


全部忘れてあげる。



だって……私も羽田が好きだから。




「バカだね。あんな可愛い子フるなんて……」


逆立ちしてもあんな女らしくできないよ、私は。



「仕様がねぇだろ。好きになれねーもんはなれねーんだから……」



そう言いながらさり気なく近寄ってこないでよ。

ここではマズイって言ったでしょ。


皆が見てるんだよ。

また変に誤解されるって。


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