あるワケないじゃん、そんな恋。
「でもさ、お前もう25になるんだぜ?そろそろ恋愛の一つくらい経験してないとヤバくない?」

「ヤバいの?それって」


顔をテーブルから持ち上げて羽田を見返した。


「ヤバいだろ。処女で結婚とか、今時ねぇって!」

「ええー⁉︎ そうなの⁉︎ 」


言った時点で、羽田は苦しそうに笑いだした。

いきなり大笑いをされて呆然としてたら、やっぱ処女だったのかよ…と、ウケられてしまった。



「ひどっ!今の、私がそうかどうか試して言ったの⁉︎ 」


サイテー。こいつ、あんまりだ。


「だってさ、さっき本読みながら相当『わからん、わからん』言ってたじゃんか。恋愛も未経験だって言うなら、エッチも経験なしかなって普通は直ぐに勘づくって!」


頭や腕をグーで殴ろうとする私の手を避けながら、羽田は苦しそうに弁解した。


「もうサイテー!酷いことばっか言う羽田なんかとは飲まない!帰る!」


ツマミのチーズ鱈1本だけ口に入れ、足の間に挟んでたバッグの紐を手繰り寄せた。
肩に掛け、テーブルを離れようとしたら…


「待てよ!今の返事まだ聞いてねー!」


腕を掴んで止められた。


「返事⁉︎ 何の⁉︎ 」


2本目のチーズ鱈を頂戴する。


「俺と恋愛しないかって言ったろ?お前に経験させてやるよ。恋ってやつを!」


「御免被ります!誰が羽田なんかと…!」

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