あるワケないじゃん、そんな恋。
やってられんわ
「お疲れ様でーす…」


翌朝、気だるそうに入店すると、店長を初めとする男性スタッフに取り囲まれた。


「ん…⁉︎ 何ですか?皆さんお揃いで…」


不気味だなぁ…と呟くと、店長がガシッと両手首を掴んだ。


「頼むわ!」


「へっ⁉︎ 」


いきなり掴まれた手首に力が込められる。
うっ血してきそうな程ではないにしろ、若干痛みがあるのは違いない。


「男にしてやってくれ!」


「へっ⁉︎ なんの事ですか⁉︎ 」


店長は潤んだような瞳で私を見つめる。
細長い顔の額に横筋を入れ、それを深めるように眉を引き上げた。


「決まってるだろう!羽田ちゃんのことだよ!」


「……羽田?」


どういう事だかさっぱり分からん。

店長に羽田のことを頼むと言われても、『?』マークしか出てこない。


「あいつの童貞を卒業させる手伝いをしてくれるんだろう⁉︎ 少々頼りないとこもある奴だけど、菅野ちゃんなら大丈夫だよね⁉︎ ここで鍛えたその腕っぷしで、羽田を守ってくれるだろうから!」


「え⁉︎ え…っと、あの〜、何のことだか、さっぱり意味が見えてこないんだけど〜?」


キョトン…とした店長の力が緩んだところで、スルッと手首を解いた。

腕っぷしが強いのはどっちだ。
手首がジンジンして痛いじゃん。



「羽田と付き合うことになったんだろ⁉︎ 」


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