おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
ひとりリビングに取り残された私は、身動きひとつ取れないまま、トラの部屋のドアを見つめることしかできない。



―――いきなり何?


どういうこと?



今まで何も言わなかったのに、なんで急に出ていくなんて言うの?




混乱した頭で考えながら、不意に気がつく。




五十鈴さんにばれたんだ。


きっと、私と同居していることを知られたんだ。


だから慌ててルームシェアを解消するなんて言い出したんだ。




私はソファに身を埋ずめて、両手で顔を覆う。



仕方がないことだ。


むしろ、今までのほうがおかしかったんだ。


婚約者がいるのに、他の女と二人でルームシェアをしていたなんて。


だから、トラが出ていくのは当然だ。




でも、心の整理がつかない。



どうして今まで通りじゃだめなの?


私たち、うまくやってきたのに。



そこまで考えて、自分の気持ちに気づいてしまう。



私はたぶん、淡い期待を抱いていたのだ。



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