おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
話しているうちに、また涙がこみあげてきた。



でも、真剣な顔で私の話を聞きながらも、ぐびぐびと缶ビールを飲んでいる香苗を見ていたら、なんだか笑えてきて。


結局、泣き笑いになってしまう。



「もう、香苗、飲みすぎ! まだ午前中だよ?

それに、ひとが真剣に話してるのに!」



「こっちだって真剣に聞いてるわよ」



「ほんとにー?」



「ほんとに。でもほら、酒がすすむ話題だからさー」



香苗はくすくすと笑いながら、あたりめにかじりついた。



その姿を見ていると、ふうっと全身の力が抜けた気がした。



「しかしねえ、そんなことになってたとは。

あんなにただの同僚だ、お気楽なルームシェアだ、って言い張ってたのにね」



「あのときはほんとにそう思ってたの」



私もビールの缶をあけ、一気に半分ほどを開ける。



トラとの関係が切れてしまったことに対する寂しさや虚しさが、消えたわけではないけど、こうやって人と話しているだけで、少しは気が楽になる。



トラには相手がいるんだから、諦めるしかない。


きれいさっぱり忘れよう。



今までよりもずっと前向きな気持ちで、そう思えるようになった。




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