おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「………王子様だねえ、ほんとに」


赤木さんが缶コーヒーのプルを開けながら、しみじみと呟いた。


「あんな完璧な男が実在するとはねえ」


完璧な男、だって。

私は心のなかで噴き出す。


トラは確かに会社では完璧だけど、家ではまったくそんなことないのだ。


酔っぱらってリビングに転がったまま寝ちゃうこともあるし、

暑いからってお風呂上がりにパンツ一丁で歩き回ることもあるし(さすがにそれはやめてと懇願したけど)、

休みの日には無精髭を生やしたままボサボサの頭でコンビニに行っちゃったりするし。


そんなことを考えていると、なんだかほのぼのとした気持ちになってきて、心なしか仕事もはかどるような気がした。







「―――はあ、終わったあ」


今日のノルマをやっとこさ達成したのは、10時すこし前。


「私もなんとか終了」


赤木さんも私とほぼ同時にパソコンの電源を切った。




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