クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
突然始まった同居生活。仕事が終わっても朝比奈先輩の家に帰ると思うと気が重くて、会社近くの漫画喫茶で十時過ぎまで時間を潰した。

最初は漫画を読んでいたけどそれも飽きてきて、久しぶりに恋愛小説を執筆し始めた。昔はパソコンを使っていたけど、今回は携帯のメールの作成画面にストーリーを打ち込んだ。これなら場所に関係なく執筆出来るからだ。

タイトルは『遺言状』。イギリスのハンサムでお金持ちのビジネスマンが公園で女の子を拾うところから物語が始まる。

登場人物はイギリス人だし、自分の世界とはかけ離れていて現実逃避するにはいい。

今抱えている不安も、悩みも……執筆に没頭していればその時間は忘れる事が出来た。

十一時前に帰宅したけど、朝比奈先輩はまだ仕事だったのかいなかった。彼の姿がなくてホッとする自分がいた。

月曜日も火曜日も先輩が帰宅したのは深夜零時前。私はすでにシャワーを浴びてもうベッドに入っていたから、夜は彼と顔を合わせずに済んだ。
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