クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
12、婚約者のフリ
朝比奈先輩に連れられて会長室を出る。

ショックで頭がおかしくなりそう。

「源さんが……会長?」

図書館でよく会うおじいちゃんがうちの会社の会長だった。

図書館のバイトを始めたのは二ヶ月程前。

前の会社をリストラされた時、大学時代の恩師のところに相談に行ったら、あの新宿にある図書館のバイトを紹介された。会長に初めて会ったのはバイトを始めて二回目位だったと思う。棚に本を戻していると、紺の着物姿の白髪のおじいちゃんに声をかけられた。

『源氏物語の本はどこにあるかのう?』

多分、他の分野の本なら、どこにあるのかわからなくて他の職員の人に聞きに行ったかもしれない。

でも、大学時代、源氏物語を研究対象にしたゼミに入っていた私は日本の古典文学の棚はチェックしていた。英語は好きだったけど、英米文学にあまり興味がなかったし、私は国文科専攻だった。
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