こじらせ女子の恋愛事情
「えっ、何でそこなんですか?」

座席に腰を下ろしたとたん、松坂くんが不思議そうに首を傾げて聞いてきた。

「私、前の方だと酔っちゃうのよ」

そう答えた私に、
「ああ、そうですか…」

松坂くんはがっかりしたように返事をすると、
「じゃあ、出発しますからシートベルトを締めてくださいね」
と、言った。

私がシートベルトを締めたことを確認すると、車が発車した。

前の方だと酔うなんて、ウソだけど。

悪いけど、あなたの車には乗っても思惑には乗りませんから。

心の中で舌を出すと、窓の外に視線を向けた。

それにしても、一体どこへ連れて行くって言うんだろう?

変なところ――例えばラブホテルとか――だったら絶対に許さないんだから。

移り変わる景色を見ながら、心の中で呟いた。
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