【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
ごめん、愛してる



「メリクリスペシャル入りまーす!」


いつにも増して転移達の声が飛び交う店内。活気づいた店内を走る皆は、それぞれサンタの帽子だったり、トナカイの角だったりを着けて走り回る。


「へぇ……凄い賑わいだな」


クリスマスで日曜日の今日だけど、変わらず私はアルバイト。けれど、いつも私が座る店内の端っこの席の向かい側には蒼次郎。


せっかくのクリスマスにバイトなんて申し訳ない、というお店の皆の計らいだったんだけど、正直余計な計らいだ。


まあ大喜さんやテツやエディ、マサトは私の本音なんか知らないからしょうがないんだけど。


私の大切な空間に蒼次郎がいる事が鬱で堪らない。クリスマスなのだから当然一緒にいるのが自然だろうに、世界の何もかもがくすんで見えてしまう。


お喋りでない蒼次郎は私の仕事の邪魔はせず、注文したコーヒーと特大オムライスに舌鼓を打ち、楽しげに店内を観察している。


見るな、聞くな、私の大切な場所を、と叶わぬ願いを心の中で唱える事しか出来ない。
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