【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
一度シャワーを浴び、このままもう一度寝て、寝正月にでもしてしまおうかと思いまたベッドへ転がると、スマホが忙しなく振動しているのに気付く。


スマホは本当の意味で年中無休だ。僕みたいに芸能人のマネージャーを兼任していると更に、可哀想になってしまうくらい忙しい。


でも、確か零さんは大晦日には掃除をして、新年早々穂純と一週間程海外に行く筈。


仕事の電話でないのは分かっているから出るのも億劫で、スマホには申し訳無いが枕に顔を埋めて知らんぷりしてみたものの、もし美姫からだったらと思い、僕ははっと顔を上げた。


慌ててディスプレイを見ると、そこに表示された名前は『大喜』の二文字。


あんな酷い仕打ちをした僕に、美姫が連絡する筈無いじゃないか、馬鹿だな、僕は、なんて肩を落としながら、そのしつこいくらいに鳴る電話を取った。


「君ですか。どうしました?もう後半日もしないうちに今年が終わるというのに」


《え、寝起きですか?機嫌悪いなぁ。ってか、君ですかって、もしかして、誰かさんの電話だと思って期待してたとか?》


いつでも明るい大喜。五年前から変わっていない部分だけれど、変わったのはあの当時は言われっぱなしの馬鹿な年下坊主だった大喜も、今や人の心を読んで突っつけるようになった事。
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